近年、一部の高周波回路の設計をされているユーザー様から「規則正しいスパイラルコイルの作成は大変」「❝基板内❞にスパイラルコイル形状の導体パターンを作成したい」という相談をいただいておりました。
ワイヤレス充電器や小型基板の製品を設計するなかで、「インダクタ(L)として使用する場合」「アンテナとして使用する場合」「熱を発生する場合」などの仕様用途でコイル配線を使うことがあります。
そこで、新バージョン「Quadcept Ver.10.5.0」では、4種のコイル配線*を瞬時に自動生成できる新機能(ウィザード)を実装いたしましたので、ご紹介します。
*今回実装されたのは4種のスパイラルコイル形状の配線を作成する機能です。以下よりコイル配線と記載いたします。
コンテンツ
これまでの課題を解消!
コイル配線を作成する方法は3種類あり、それぞれの作業内容に課題と手間がありました。
事例1:手作業で作成するのは面倒だった
・図形機能(円弧、2点円弧)を使って、手作業で作成した場合、精度やクリアランスを保つのが難しく、正確なスパイラル配線の作成に時間がかかる。
・新機能のウィザードを使って、数値入力でコイル配線を自動生成する。
事例2:コイル配線の輪郭部分をDXF/DWG入力して作成すると精度に課題があった
・DXFをベタに変換する際、円弧や曲線などは細かいライン(線分)になり、交点の座標位置がずれて、閉図形やひとつながりの線分にならないケースがあったため、編集が大変だった。
・DXF/DWG入力時に「座標誤差補正」を使って、複雑な形状も正確に入力できるようになりました。
事例3:コイル配線を単線でDXF/DWG入力すると、エラーが検出できなかった
・ライン同士の接続チェックはDRC対象外になってしまい、ミスが発生する。
・ラインと配線の接続チェックではクリアランスエラーが発生する。また、回路図と連携がとれず、アノテーションでも課題があった。
・DXF/DWG入力したラインを配線に変換できるようになったので、DRCに関する課題は解消され、回路図と連携がとれるようになりました。
便利な新機能「コイル配線作成」とは
コイル配線作成とは、4種のコイル配線を数値入力で自動作成する機能です。
4種のコイル配線を作成
- 矩形可変角R
- 矩形均等角R
- 矩形角(Rectangular Inductor)
- 円(spiral Inductor、スパイラルパターン)
作成方法
PCBシートを開いている状態で、上部メニュ―バー【PCB作成】の「コイル配線作成」という機能を選択すると、コイル形状を作成することができます。
複雑なコイル配線の作業を短縮する新機能!
4種のコイル配線について説明してきましたが、新機能では作れないコイル形状(高周波設計で使用するsine(sin)、cosine(cos)などの関数を使った複雑な形状)もあります。
今回の新バージョン「Quadcept Ver.10.5.0」では、配線機能の拡張により、それらの形状も設計しやすくなりました。
具体的には、これまでDXF/DWGのラインのまま設計せざる得なかったケースに対して、ラインを配線に変換することができるようになり、回路図との連携やDRC検証においての課題が解消されました。
参考 配線に変換オンラインマニュアルその他:高度な設計に必要なシミュレーションや実測テストのご紹介
高度な設計を行うにあたって、EMCやノイズ対策の需要が高まっています。Quadceptが取り扱う製品の中から提供できるシミュレーションサービスや解析サービスもございますので、気になる点がございましたら、ご遠慮なくお問い合わせください。
参考 PCBシミュレーション製品サイト 参考 DEMITASNX連携製品サイト 参考 お問い合わせ窓口製品サイトさいごに
今回の機能追加では、数値入力でコイル配線を自動生成できる機能やネット保持しないラインの配線化を可能にしたことで複雑な配線形状を短時間で作成できるようになりました。これからもユーザー様の設計効率的に設計支援できる機能を追加していきますので、皆様のご意見を引き続きいただければと思います。
また、今回のバージョンアップ内容を説明するセミナーを開催しますので、時間のご都合がよろしければ、ご参加ください。
参考 【11/5開催】Quadcept V10.5.0 のバージョンアップ内容が1回で分かるセミナーセミナー案内